東京地方裁判所 昭和27年(ワ)190号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔事実〕原告は被告から金三十万円を借受けるに際し仏像等を債務の担保として被告に引渡したが右担保契約の内容は、もし原告が弁済期に債務を履行しないときは右各物件は価格を三十万円として支払に代えて完全に被告の所有とする趣旨であつた。しかるに原告は弁済期に債務の履行をしなかつたので右物件は、価格を三十万円として支払に代えて完全に被告の所有となつた。ところで、消費貸借に際し原告が被告から現実に受領したのは金二十三万七千九百円であるから被告はその差額六万二千百円については法律上の原因なくして利益を受け、それによつて原告に損失を及ぼした、と主張した。被告は不当利得の成立を争つた。
〔判断〕原告勝訴、判決は原告の主張を認めつぎのとおりに説明している。曰く
「本件担保契約の内容は、原告は借受債務の担保として右各物件を被告に譲渡する。原告が弁済期に債務の履行しないときは右各物件はその債務の支払に代えて完全に被告の所有となる。というのであつたことは当事者間に争がない。かような契約にあつては、特別の事情のない限り、たとえ消費貸借成立額が約定額より少なかつたとしても、また弁済期までに債務の一部の弁済があつて債務額が減少していたとしても、担保物件は弁済期における債務額の支払にかえて貸主の所有となる主旨であると解するのが相当である。しかし、また、かような契約にあつては担保物件の価格が客観的に債務金額を超過すると認められるにおいては、特別の事情なき限り、当事者の意思は担保物件を当事者が貸付けると約した債務の全額(一部弁済をしない場合に於ける)と同額に評価して代価弁済しようというにある、と解するのが相当である。したがつて現実貸付額が貸付けると約した額より少なかつたとき、または一部弁済があつて債務額が減少したときは担保物件が貸主の所有になることは動かすことができぬ一方、貸主は前記の差額だけ正当な理由なくして利得することになるといわなければならない。」